スタンスを定める、貫く


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牛河原は静かな声で言った。
「だがなー俺は夏波書房の編集者時代、部下の編集者がどうしてもこれを出したい、何が何でも出したい、そう言ってきた本なら必ず出した。それが俺の編集長としての矜恃だった」
飯島ははっとしたように顔を上げた。
「そのばあさんの本は、丸栄社が全額出して出版しよう」
飯島は口をぽかんと開けたまま、返事もできないでいた。荒木もまた呆然と牛河原を見つめていた。
夢を売る男 (幻冬舎文庫)』(百田尚樹 作/幻冬舎文庫)より

 

■出版業界の裏側
この小説は出版業界の裏側(自費出版の商法や、ジョイント・プレス)を描いた作品。SNS全盛期“自己顕示欲”が蔓延する時代で、中小規模の出版社では、出版にかかる費用を著者にねん出させて、出版させ“夢”の本の出版を手伝う商法があるらしいです。

■牛河原編集長のプライド
一見、悪の親玉的な編集長牛河原。出版の儲けのカラクリを100も知ってる男です。しかし、最後の最後に、部下の編集者から「この本は、著者の費用負担なしで、本当に出版させたい」という申し出を受け入れます。どのような作品だったか、詳細は登場しませんが、“編集者”として利益よりも価値に配慮する場面に、一瞬にして爽快感があふれてきました。

■スタンス
「これだけはやりたくない」「これだけはやりたい」。自分の中には、何かしらの基準があることでしょう。ただ、それを日々どれだけ確認し、それに基づき判断を下しているか。私も「やりたくないリスト」と「やりたいことリスト」というのがあります。この小説のように、局面においてスパっと潔く決断できているかどうか自分でも半身半疑ですが、日々確認作業だけは行うように心がけています。それから牛河原編集長の仲間の“見る眼”を十分認めるスタンス。進言に対して責任は編集長である自分が持つ覚悟も感じられます。最初は悪の親分みたいな印象でしたが、自分のスタンスががっりち定まっている、そんな夢を売る男の姿でした。

★ぷち日記
昨日の日中は、祖母の定期通院の付き添い。5週間に1度、行きます。90歳の祖母は内科・外科・精神科・眼科とお世話になっています。待っては移動、移動しては待って…。私は待合時間はPCを持ち歩き、メールの送受信と合間に読書。おかげでこの本を読み終わりました。待っている時間もなかなか悪くない。普段見れない教養番組を待合室で見ていると、面白いテーマを見つけたりすることもあります。インフルエンザの予防接種も祖母と仲良く受けてきました。
夜は5か月ぶりに美容室さんへ。三味線をはじめてから、髪をアップに上げなくてはならないので、伸ばすことにし、放っておくことにも慣れてきました(笑)。前は1か月に1度や2か月に1度などのペースで髪を切りに行かないと気が済まなかったのに…。今年のやりたいことリストには「ヘアースタイルを変える」っていうのがあったので、一つクリアかな(笑)。スタイリストさんとも映画の話や本の話などで盛り上がりました。